卵の殻が割れるとき

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来た!見た!勝った!錦織が日本人初の楽天ジャパンオープン優勝!

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Rakuten Open @Tokyo, Japan
錦織圭 7-6(5), 3-6, 6-0 Milos Raonich

 遅ればせながら錦織優勝です!この嬉しいニュースが飛び込んだのは日曜のことですが、多忙のあまり更新が遅くなってしまいました。日本中のテニスファンが歓喜し、テニスをよく知らない人もニュースや新聞などでその快挙を知ったことでしょう。4年ぶり2度目の優勝が地元日本でのものとは、錦織はやはり何か「持っている」のかもしれません。

 今日はそんな錦織の決勝でのプレーを分析してみたいと思います。

 私も実は準決勝、対バグダティス戦を有明まで観に行っていました。3時間におよぶ緊迫したラオニッチとマレーのキープ合戦を目の当たりにし、さて錦織はどうかなと少々不安も抱えながら試合がはじまるのを待ったのですが、今思えばそれはまったくの杞憂でしたね。その時の錦織の調子の良さといったらこれまでに類を見ないほど。コート狭しと駆けまわり、フォアハンドでもバックハンドでも積極的にボールを展開していくさまは、これまででも最高に近い出来だったのではないでしょうか。

 決勝でも錦織の調子の良さは健在でした。スタートこそ228km/hのサーブをセンターに叩きこまれたりとやや緊張感ある動き出しとなりましたが、ストローク戦ではラオニッチを圧倒。前日のマレー戦を観ていた私からすれば、ラオニッチはサーブ一辺倒の選手にあらず、フォアも良くボレーもしっかり打てる厄介な相手という認識だっただけに、これは驚きました。サーブで、あるいはフォアの一発から崩されての流れで決められる以外はラリーの主導権をほぼ握っており、粘り強くペースあるボールで前日にはあまりなかったエラーを引き出すことができていました。

 おそらく準決勝でラオニッチがマレー相手にあれだけ有利に展開を進められたのは、マレーが消極的になっていたこともあるのでしょう。マレーの悪い時の癖ですが、相手が調子よく攻めてきているときに、ついつい相手のミス待ちに徹してしまうことがあります。今年のウィンブルドン決勝での対フェデラー戦もそうでしたが、そうやって甘くなった繋ぎ球をいいように攻められていたように思います。気持ちが消極的になっているときは強打しても中途半端になりかえってミスが増え、そうするとなおさら繋ぐしかなくなる。その悪循環です。ツアー屈指のリターン力を誇るマレーがあれほどラオニッチのサーブを返せていなかったのも、単にラオニッチのサーブが良いという以上のものがあると考えるのが妥当でしょう。

 その点決勝での錦織はラオニッチのサーブにも果敢に向かって行きましたし、2ndサーブではあわよくばエースをとってやろうという意気込みが感じられました。先日USオープンでチリッチの跳ねる2ndサーブに手こずっていた錦織の姿はそこにはありませんでしたね。ストロークでも前後のポジションを的確に駆使し、ラリーのペースをコントロールしていましたし、そういったプレーがラオニッチに気持ち良くボールを打たせず、彼の心に前日にはなかった躊躇いを生じさせたのではないでしょうか。

 錦織の試合では相手の実力の全てを出させてから、さらにその上を行くという展開が割と多くありますが、今回の決勝でもそれは同じでした。第2セット終盤からラオニッチには疲れが見え始め、第3セットではなおもコート広くボールを展開する錦織に対して、ボールを追うのを諦めるシーンが目立つようになって来ました。疲れが出ているのは明らかで、そういう意味では錦織の得意な試合展開に持ち込めたのでしょう。

 一方でラオニッチも大会を通じて非常に良いプレーをしていました。これまでも高く評価されていたサーブだけでなく、フォアハンドからの積極的な展開、ポイントを決めるボレーの技術も予想以上のものがありました。そして意外と足も速い。そして個人的に大事なポイントなのですが、しっかりした戦術眼を持っていると感じました。マレー相手に事前に立てた戦術を確実に遂行できる力はもちろん、錦織戦では武器であるサーブが対応されてしまっていると感じたのか、第1セット終盤からはサーブのコースにボディを混ぜ始めます。錦織の頭にも当初これはなかったらしく、220km/hを超えるボディーサーブに、避けるだけになるシーンも見られました。とかくショットの威力に注目されがちなラオニッチですが、このようにソフト面でもデルポトロ、錦織らとともに次世代を担うであろうポテンシャルを感じさせましたね。

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彼らが次世代を担う人材であることを疑う余地はもはやないだろう。

 二人の若手同士の対決はいずれ迎えるであろう世代交代後の勢力図を象徴するかのようで、大変新鮮でした。ここ数年で大きく競技としてのレベルが上がり、フィジカルと経験がものを言うようになってきたATPツアーは若手には厳しく、なかなか次の世代の実力者が出てこない現実もありますが、きっとこの二人は遠からずツアーを牽引していく存在となってくれることでしょう。


※以下動画を並べておきます。