卵の殻が割れるとき

1年にわたりこちらの方でブログを書いてきましたが、もとのBloggerに帰還することにしました。現在はこちら→http://ichiharu-bl.blogspot.jp/

3日間の戦いに決着!デ杯プレーオフ vsイスラエル

 3日間におよぶ長い戦いに決着がつきました。日本代表は残念ながらイスラエルに2-3で敗退し、ワールドグループ残留はなりませんでした。日本代表、イスラエル代表、どちらの選手もお疲れさまでした。

[9月14日(金)]
添田豪 6-2, 6-4, 3-6, 6-4 ●Dudi Sela
伊藤竜馬 3-6, 2-6, 4-6 ○Amir Weintraub
[9月15日(土)]
伊藤竜馬杉田祐一 7-5, 3-6, 3-6, 1-6 ○Jonathan Erlich・Andy Ram
[9月16日(日)]
錦織圭 6-3, 3-6, 4-6, 6-4, 7-5 ●Dudi Sela
添田豪 3-6, 6(5)-7, 6-4, 3-6 ○Amir Weintraub

 それでは対戦を振り返っていきたいと思います。日本チームの戦い方としては前回ご紹介した通り、シングルスを3つ以上とるというのが基本戦略でした。そのためトップ2の錦織、添田をシングルスに専念させ、ダブルスは伊藤と杉田でとれたらラッキーぐらいの感じでしょう。

 しかしながらこの日本チームの目論見は脆くも崩れ去ります。

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 まず1つ目の誤算は錦織の肩の怪我です。シングルスを確実に取るという戦略のうえでは、危なげなく勝利をもたらすエースの存在は不可欠です。これは戦略のうえでも、選手の精神的な負担のうえでも重要なこと。幸いにも今回のイスラエルはシングルス陣が世界ランキング98位のセラと223位のワイントラウブでしたので、3番手の伊藤を急遽シングルスで起用することでこの危機を乗り切れる目算となりました。実際にはこの目算が一番の大誤算だったのですが…。

 2つ目の誤算は、なんといってもワイントラウブの獅子奮迅の大活躍でしょう。私もライブストリーミングなどを駆使して経過を見ようとPCにかじりついていたのですが、正直彼の予想外のプレーにはため息を漏らすほかありませんでした。前回の記事でワイントラウブを紹介したときは、私は全然具体的な情報を書きませんでしたよね。そのぐらい、英語の得意でない私にはあまりにも彼に関する情報がなかったのです。とはいえこのランキング差ならさすがに問題無いだろうと判断し、「223位であれば余程のことがない限り大丈夫でしょう」とスルーしていたのですが…本当に彼こそが今回のプレーオフの台風の目でした。

 ワイントラウブのプレーは凄まじいものでした。彼のプレースタイルはいわゆるハードヒッターであり、ほとんどのショットをしっかり振りぬいて打ってきます。私は伊藤との対戦は所用からほとんど観ることができなかったのですが、スコア的にもストレートであり、どうやらワイントラウブの攻めが爆発したのだろうと考えられました。

 いろいろと情報を集めると、どうやら激しくボールを叩いてくるワイントラウブに対し、伊藤は必要以上に守勢にまわってしまったようでした。本来伊藤はフォアハンドで果敢に攻める攻撃的な選手。慣れない守備的なプレーで、逆にエラーを増やしてしまうことは十分考えられます。しかしこの時点ではまだ私も「ああ、今日は『全部入る日』だったんだな。まあしょうがない」そのくらいに思っていました。

「添田ならしっかり勝ってくれるだろう」

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 通常このようなタイプは安定性にかけるもの。たまたま調子の良い日があったとしても、長続きするものではありません。もし2日空いて、それでもものすごいプレーをしてくるようなら、彼はとっくにトップ50に入っていてもおかしくないはずです。が、私の予想はまたしても覆されました。ワイントラウブは添田との対戦でも、前々日に見せたような素晴らしいプレーをまたも再現してみせたのです。攻撃的なストロークで添田を左右に振り回し、カウンターを打たせない。たとえ走らされようともボールが甘くならない。ポイント先行されブレイクのピンチには素晴らしい1stサーブで切り抜ける…正直ランキング10位台の選手に匹敵するほどの内容だったと思います。

 特に彼のバックハンドは攻守ともに添田を大いに苦しめ、ポイント取得の足がかりとなっていましたね。添田はそれを嫌ってワイントラウブのフォアに球を集めるなどしましたが、後半はフォアハンドにも冴えが出てきて、だんだん打つ手がなくなっていきました。添田も3セット目以降は意地を見せ、攻撃的なストロークで1セットを取り返しますが、途中雨での中断などもあっていい流れを断ち切られてしまいました。

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 結果から言えばワイントラウブの活躍により勝利を手にしたイスラエルでしたが、正直今回は彼だけではなく、イスラエルはその全員が素晴らしいプレーをしていたと思います。事前の下馬評通り、王道のプレーできっちりダブルスをものにしたエルリックとラムに加え、エースのセラも2敗こそしましたが、錦織戦はフルセットに持ち込み4時間31分の接戦を演じました。錦織戦でのセラは錦織のミスにも助けられましたが、何よりコートカバーリングが大変良く、攻めに転じた時の思い切りもあって錦織にペースを掴ませませんでした。

「やはりデ杯は違う」

 今回の対戦を通して、私はそのことを痛切に感じました。対戦前の下馬評は、もちろん参考にはなりますが、実際にどうなるかは蓋を開けてみないとわかりません。後でわかったことなのですが、今回活躍したワイントラウブは以前にもデ杯でラオニッチを破るなどしており、典型的な「デ杯で化ける」選手であったようです。もう26歳と若くはありませんが、このようにポテンシャルを秘めた選手がゴロゴロひしめいているのが男子の怖さ。あらためて、デ杯というものの特別さを感じさせてくれた試合だったと思います。

 さて、日本代表はこれでワールドグループから降格となり、来年は再びアジアグループでの参加となります。降格となってしまったことは残念ですが、それでも着実に若手が育ってきていることは事実でしょう。今後は錦織、添田、伊藤、杉田といった今回のメンバーだけでなく、成長中の守屋、内山、内田などがどういう形でチームに食い込んでくるのか、見守りつつ楽しみにしていきたいと思います。来年またワールドグループへの切符を掴み取ることを信じて…。